2020 (R2/社20/41歳)

2020/3月~6月 新型コロナウイルスによる大会中止

新型コロナウイルス感染症によって東京オリンピック延期決定を皮切りに、3月から6月の競技会が軒並み中止になった。 7月に開催予定だった世界マスターズ(トロント)の中止も早々に決まり、 今回は旅行代理店を通さずに航空券やホテルを予約していたが、全てキャンセルすることになった。 国内の大会も、当初は3月、4月と小出しに中止が決定していったが、 全国に緊急事態宣言が出された頃には、日本陸連から6月末までの大会を中止とする方針が出された。 4月中旬までは明石競技場などが使えたが、ゴールデンウィークになると、人との接触を8割削減することが求められ、 県立公園の駐車場などまでもが閉鎖された。

緊急事態宣言下においても、競技者としてトレーニングを中断するわけにはいかないので、 いつでも使用出来る練習場所を2か所設定した。 ひとつ目の練習場所は近所の遊歩道と公園。遊歩道には100mと200mのポイントを設定してテンポ走のコースを確保した。 近くにちょうど良い坂道もあったので、坂ダッシュもすることができた。 ふたつ目の練習場所は三木防災公園。ウレタン舗装のようなランニングコースもあり、そこではスパイクを履くこともできた。 ここでも、メイン練習を行った長い上り坂に100mと200mのポイントを設定して走り込んだ。 学校が休校となった5月までは、シーズンを控えた3月のトレーニングのような意識で、スピードアップも意識しながら、練習量を確保することができた。 6月からは兵庫県の学校でも分散登校が始まり、7月11日の兵庫選手権を目指してのトレーニングを行った。

2020/8/2 三校定期戦 (ユニバー)

7月11日の兵庫選手権を目指して、ドンピシャで調整できていたのに、気象警報の発令により大会が延期されることになった。 しかも延期日は4週間後の8月9日である。コロナで大会が軒並みなくなって、兵庫選手権1本に絞ってやってきた者としては精神的にもきつい延期である。 4週間というのは微妙な期間で、本来ならここからトレーニングの量を増やして調子を落としていくべき時期に、あと4週間コンディションを引っ張ることはなかなか難しいが、 やるしかない。8月9日に再度調子のピークを迎えることを目指して、トレーニングを継続することになった。

従って、三校の200mHには、兵庫選手権に向けての調整の一環として出場することになった。試合1週間前のポイント練習という位置づけである。 結果は、向かい風の中での24"51(-1.0)。セカンド記録である。自己ベストは2年前の24"49(+0.0)。 風を考慮すると今年の方が走れている。 走っている感覚も、特にコーナーを抜けるあたりで進む感じがあり、非常によかった。 社会人20年目、41歳で迎えたシーズン初戦。コロナで予定が狂いまくっているが、今年も確かに身体は仕上がっている。 試合に出場して結果を得ることで、その確信が持てた。

2020/8/9 兵庫選手権 (ユニバー)

腰痛からのひどい右脚の痺れによって欠場した昨年の兵庫選手権。その時にはこんなことを思っていた。

来年こそは自信を持って走れる状態に仕上げて、彼らと勝負したい。 2020年の競技会の日程はもちろんまだ決まっていないが、例年通りのスケジュールだと次のようになる。 来年の7月、自信を持って試合に出場したい。そして納得のいく走りがしたい。

そして1年がたった。コロナで世界マスターズは中止。警報で兵庫選手権は4週間延期。 陸上の大会が当たり前のように行われて、当たり前のように参加してきたけど、 それは当たり前のことではなかった。 社会や時代の変化の中で、多くの人々に支えられて大会は運営されている。その中で私たちは走っている。 世界マスターズは中止になった。兵庫選手権は中止にはならず延期となった。 4週間という難しい再コンディショニング。夏のユニバーの風向き。 色々と不安要素はあったが、8月9日に走るチャンスを得た。そこに向けてベストを尽くすしかなかった。 そしてベストは尽くせたと思う。 自信を持って試合に出場できた。そして納得のいく走りができた。 決して満足のいくタイムではないが、予選で41歳日本最高記録を更新することができた。 高望みしがちだが、今日の内容と結果は合格点だったと思っている。

結果はさておき、試合に出ることが面白いんだとあらためて感じることができた。 試合が近づにつれ、徐々に気分が盛り上がる。 試合当日のアップの時間は最高に楽しい。 完全に仕上がった状態なので、身体は軽く思い通りに動く。 綿密な計画を立ててはいるが、 サブトラックの様子や当日の天候を考慮して最善と思われる行動をチョイスする。 予選と決勝の間は極力エネルギーを消費しないように過ごす。 私は冷房の効いた部屋より、風通しの良い木陰が好きだ。 この日も木陰に横になって青々とした葉っぱを眺めていた。 過去の同じような光景がよみがえってくるようだ。 試合当日に感じる気持ちの盛り上がりは、若いころと全く変わらない。 41歳になっても、昔と同じ気持ちで競技と向き合うことができている。 競技に対するモチベーション。陸上競技に対して私が一番誇れることかもしれないと思った。

コロナの関係で今後の試合に関しても急きょ中止になる可能性は十分にある。 実際、8月8日に近畿選手権の中止が発表された。 マスターズの大会は開催されそうになく、ジュニアハードルの試合に出場するチャンスはどうやらなさそう。 ならば、ハイハードルの試合で記録を狙うしかない。

  1. M40 110mH(0.991m)日本記録 14"22
  2. M40 200m 兵庫記録 22"73
昨年末に掲げた、目標のうちこの2つをターゲットにしようと思う。ハイハードルで14"22。これが実現できれば最高だ。 9月末の関西実業団(ヤンマーフィールド長居)に照準を絞る。

2020/9/13 姫路選手権 (姫路)

目標とする関西実業団の2週間前という、ちょうど良い時期に姫路選手権が開催されるということを知り、 練習の一環という位置づけで出場した。 練習の一環とは言うものの、前回の兵庫選手権と今回の姫路選手権、そして関西実業団、この3大会で今年は終わる予定なので、条件が良ければ記録も狙いたいと目論んでいたが、 予選、決勝ともに強い向かい風、満足のいく記録を出すことはできなかった。 主観的に、1台目までの動きは悪くはなかったが、その後のインターバルランがいまいちよくなかった。 決して身体が動いていないという感じではなかったが、今日の走りは60点。決勝では競り負けて100分の1秒差の2位であった。

さて、もともと兵庫選手権が実施される予定だった7月12日頃を境に、ふたたび左脚の付け根に違和感(痛み)が出始めている。 その後はこの違和感となんとかかんとか付き合いながら練習を消化し、兵庫選手権とこの姫路選手権を乗り切った。 現在、練習のはじめのうちには痛むものの、次第に気にならなくなるという状態。近年よくある状態である。 記憶に新しいところでは兵庫教育大学派遣1年目の2017年、この年は春シーズンこそ順調にこなせたが、8月頃から左脚の付け根が痛みだした。 そして、最終戦として予定していた全日本マスターズを欠場している。 ある程度の期間は何とか痛みと付き合うことができるが、長く引っ張ることにはリスクがある。 そのように考えた結果、今年は関西実業団を最終戦とした。 ここで一発勝負だ。 当初ヤンマーフィールド長居で開催予定だった同大会は、密を避けるためにヤンマースタジアム長居で開催されることになった。 久しぶりの長居のメイン。ここで出せなかったらその後にも出せないだろう。 9月27日。今季最後の大一番。目標は高くマスターズのM40日本記録14"22に設定する。 ハイハードルでジュニアハードルの記録を更新して見せよう。

2020/9/27 関西実業団 (ヤンマースタジアム長居)

この日を目指して最善と思われる取り組みをしてきたが、全く満足のいく走りができなかった。 主観的な仕上がり具合は80点といったところか。 アップの感触もあまり良くなかった。 サブトラックでの最後の1本では、1台目にリード脚を強くぶつけてしまい派手に転倒。 気負いすぎは良くないと、 リラックスして感覚だけを取り戻そうと行ったそのあとの試技では、左腰に嫌な違和感が走った。 昨年の関西実業団、この日アップを行っているヤンマーフィールド長居でのレース中に発症した腰痛のことが思い出される。 そのような状態でサブトラックでの練習は終了。もやもやした気持ちを抱きつつメインスタジアムへ移動し、現地での練習で出来る限りよい感覚をとりもどしてレースを迎えたが、 第1ハードルで大きく浮いてしまい、後半もあまり走れなかった。 兵庫選手権の予選の記録を0"08秒上回るシーズンベスト、41歳日本最高記録を再度更新したものの、全く満足のいく走りではなかった。

いつもの最終戦なら、もっとしっかりと今シーズンを振り返るところだが、今はそんな気持ちになれない。 現在、少し前から自分の中で考えていた最後の手段のためのお願いをしようかどうかを迷っている。 今季はこれで終わりにするはずだったのだが…。

2020/10/4 神戸リレーカーニバル (ユニバー)

少し前からこのアイデアは自分の中にあった。 もし関西実業団で目標記録の14"22を出すことができなかったら、 その翌週に行われる神戸リレーカーニバルで、ジュニアハードルのレースを行うことをお願いしてみようというアイデアである。 お願いしたところで実現可能かどうかはまったく分からない。 でも、これは面白そうだと思っていた。

関西実業団の結果を受けて、いよいよ本当にお願いすることになった。 左腰に嫌な違和感を感じていたので、当日に申し出ることはできず、翌日の夕方に連絡することになった。 コロナの影響で、世界マスターズ、全日本マスターズ等が軒並み中止になりジュニアハードルのレースを走る機会がなかったこと、 M40の日本記録14"22の更新が目標で、十分に更新できる可能性はあるということ、 神戸リレーカーニバルは9時半競技開始予定なので、9時25分から競技を行ってはどうかということを伝えた。 その結果、私ひとりのために、特別にジュニアハードルのレースを実施していただけることになった。 本当にありがたい。 「感謝の気持ち」という言葉がよく使われるが、 今回のレースは本当に「感謝のレース」になりそうだ。 決まったからには、出来るだけの調整をして当日を迎えなければ。 記録を狙うと言った以上、中途半端な走りはできないというプレッシャーもかかる。 今期最終レースに向けての調整が始まった。

当日は9時25分からのレースになるので、朝早くから体を作る必要がある。 仕事との兼ね合いもあって、事前の調整練習も早朝に行うことにした。 日曜のレースに備えて、木曜と土曜は6時30分から長田のグラウンドで1時間程度の調整練習を行った。 そこで「よし」という感覚があったらよかったのだが、 悪くはないが「よし」と思える状態でもなかった。 箸にも棒にも掛からない記録だったらどうしようかという不安が頭をよぎる。 しかし、やるしかない。悪くはない。やれるだけのことはやった。

7時からのアップを予定通りにこなして競技場に入ると、 2レーンから9レーンにそれぞれ10台、合計80台のハードルが私ひとりのレースのために整然と並べられていた。 ますますプレッシャーがかかる。 スクリーンには、「マスターズ日本記録挑戦会」の文字が表示され、 レースが行われる経緯の説明がなされた。 たったひとりのレースが、多くの人に支えられていることを実感する。 レースを行うことを決断してくれた陸協幹部の方々、 ハードルを並べてくれた用器具の役員と補助員、 スターター、アナウンサー、電光掲示、写真判定、風力、情報… 数えきれない方々の協力の中で走ることができる。 感謝しかない。 レーン紹介が行われると、とても大きな拍手を送っていただいた。 右手を挙げていつも通りに一礼、そして後方に陣取る長田高校の生徒に向かって再び一礼してから、 集中力を高めてスタートラインについた。

レース開始前まで吹いていた向かい風がピタッと止んだ。1台目にリード脚をぶつけたものの減速感はない。 中盤から後半の走りは、競う相手がいない分いつも以上に集中することをレース前に確認し、3歩のリズムを強く意識して走った。 ランニングタイマーは14"23で止まった。向かい風0.3mの中でのレースであった。 ランニングタイマーに表示されるタイムは参考記録で、 ゴールラインの両サイドに設置された光電子ユニットの間を選手が通過し、光軸が遮断された瞬間のタイムが表示される。 私の場合は腰からお腹の高さで光軸を切ることが多く、 前傾してゴールするために、トルソーの通過で判定される正式タイムの方が良くなることが多い。 そのあたりの事情も理解していたので、タイムが確定するまでの間はかなりの期待感をもって待ったが、 正式タイムは速報値を大幅に下回る14"30であった。 おそらく、指先などで光軸を切ったためにこのような現象が起こったのだろうと想像する。 しかし、そのおかげで見せ場を作ることができた。 目標にわずかに届かなかった悔しさと、最低限の走りができたという安堵感を同時に感じた。

コロナの影響で多くの大会が中止となった2020年のシーズン。 コロナのお陰で素晴らしいレースを体験することができた。 生徒が撮ってくれた動画を後から見てみると、 すごく大きな拍手の中で走っていたことが分かった。 何事もやってみないと分からない。 無理を承知でお願いした結果その願いが認められ、 素晴らしい雰囲気の中で走ることができた。 まさに「感謝のレース」である。 これまでにたくさんのレースに出場してきたし、 これからもたくさんのレースに出場しようと思っているが、 今日のこのレースが思い出に残るレースになることは間違いなさそうだ。

さて、コロナの影響で先のことが見通せない状況なので、来年のことはまだあまり深く考えていないが、 今の時点ではぼんやりと次のような事を考えている。

  1. 110mH(0.991m) M40日本記録14"22の更新
  2. 110mH(1.067m) 4年ぶりの14"3台(42歳日本最高15"32の更新を含む)
  3. 世界マスターズ(7月 フィンランド・タンペレ 開催未定)
しばらくゆっくり休んでから、来シーズンのことはじっくりと考えたい。 最後に、久しぶりにこの日心に響いたフレーズを残して、今シーズンをしめくくろう。

「未完」 Mr.Children

さぁ行こう 常識という壁を越え
描くイメージは果てなく伸びる放物線
未来へ続く扉
相変わらず僕はノックし続ける

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